血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2012年5月29日火曜日

性行為感染症検査-7.性器ヘルペス検査


性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)が原因で発症する性行為感染症のひとつです。

従来は口唇周囲は1型単純ヘルペス、性器とその周囲は2型単純ヘルペスとされていましたが近年、オーラルセックスによって性器ヘルペスでも1型感染の割合が増加してきています。

昔のように、1型は口唇ヘルペス、2型は性器ヘルペスと分類することは出来なくなってきています。

【検査法】

通常用いられる補体結合反応や中和抗体検査等の血液で行う血清診断法では、幼少時に1型に感染している人は、陽性となってしまいますから、性器ヘルペスか否かの判断は出来ません。

初めて単純ヘルペスウイルスに感染した場合は、急性期と回復期のペア血清(2本の血清)で抗体検査を行い、有意の抗体上昇によって診断することが可能です。

単純ヘルペスウイルスは、同一個体において幼少期の1型感染、青年期以降の性器への1型及び、2型感染、再発による病変形成といった様々な病態を取り得るので、血液による抗体検査から1型感染2型感染の判断は出来ません。

従って、性行為やオーラルセックスの2~10日前後に以下のような症状があるときには、直ぐに皮膚科を受診することです。

・感染部位(ペニスや外陰部)に痛痒さを感じ患部が赤くなり、徐々に〝痒み〟や〝痛み〟が強くなります。

・男女とも患部に小さな水泡ができ、チクチクと痛みが伴います。

・水泡が破れると、ジクジクした状態になります

2012年5月20日日曜日

血液一般検査-番外編-CD4/CD8検査-


白血球には、T細胞(細胞性免疫に関与)、B細胞(液性免疫に関与、抗体を産生する) 、null細胞(T細胞でもB細胞でもない)があります。

このうちCD4陽性細胞は、B細胞の免疫グロブリン産生を補助し、CD8陽性細胞は免疫グロブリン産生を抑制します。

リンパ性の悪性腫瘍や免疫不全症では、T細胞とB細胞の比率、さらにCD4陽性細胞、CD8陽性細胞の比率が変わるため、診断や治療経過観察のためにこの検査は行われます。

CD4陽性細胞は、HIVが非常に結合しやすいために、HIV感染症ではHIVがCD4陽性細胞に感染し細胞を破壊することから、CD4が低値となります。

逆に成人T細胞性白血病(ATL)では、HTLV-1がCD4陽性細胞に感染しCD4陽性細胞が腫瘍化し増殖します。

検査方法としては、血中のT細胞とB細胞の比率を、それぞれの細胞に特異的なモノクローナル抗体により測定します。

【基準値】

CD4 25~56%
CD8 17~44%
CD4/CD8比 0.6~2.9

※基準値は、検査施設によって若干異なります※


【基準値より上昇】

1.CD4

・成人T細胞白血病、HHV-6感染

2.CD8

・EBウイルス感染症

【基準値より下降】

1.CD4

・HIV感染、特発性CD4陽性細胞減少症、先天性免疫不全症候群

2.CD8 

先天性免疫不全症候群

【HIV感染とCD4の数の関係】


※HIV感染すると、通常1年間に60~100個/μlずつ低下しますが、AIDSの発症が近づくと
低下速度が速くなる傾向が見られます。


※CD4陽性リンパ球数が少ないほどAIDSの発症が近いので、500個/μl以下となれば、抗HIV薬の予防投与を開始します。


※350個/μl以下となった場合には、積極的に抗HIV薬による治療を開始する必要があります。


※100個/μl以下になりますと、ほとんどがAIDSを発症してしまいます。

2012年5月13日日曜日

血液一般検査-7.血小板数-


血小板の数が減少したり、その機能が低下すると、出血が止まりにくくなります。

その為、軽く何かに身体を当てても内出血をして青あざができたり、けがをしても出血がなかなか止まらなかったり、鼻血が出やすい、歯肉から出血することが頻回に起こります。

貧血があって慢性出血が疑われるときには、必ず血小板数の検査は行なわれます。

逆に、血小板の数が余りにも多くなりすぎると、血液が固まりやすくなり、血液が固まってできた血栓が血管をふさいで、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こす危険性が増大します。

血液1μl中の血小板数が10万以下で血小板減少症、40万以上で血小板増多症とされます。

10万以下になると血が止まりにくくなり、さらに5万を切ると自然に鼻血が出たり皮下出血が始まって皮膚に紫色の斑点が出たりします。

3万以下では腸内出血や血尿が起こります。

2万個以下になると頭蓋内出血を起こすなど生命も危険になります。

血小板が極端に増加している場合は、血栓症が引き起こされるのを予防するためワーファリンなどの薬剤を投与します。

※血小板の異常な増減には、重い病気が隠されていることが多いので、血液内科のある専門病院で精密検査を受けることをおすすめします。


【基準値】

13.0万~34万/μl

※自動血球計算機で測定しますから、使用する機種によって若干の変動があります。

【基準外】

Ⅰ.減少

1.軽度の減少 5~15万

・白血病、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、抗腫瘍化学療法後、薬剤性血小板
減少症、巨赤芽球性貧血、膠原病、脾機能亢進、肝硬変、ウイルス感染など。

2.中等度の減少 2~5万

・白血病、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、抗腫瘍化学療法後など。

3.高度の減少 2万以下

・白血病、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、抗腫瘍化学療法後など。

Ⅱ.増加

1.中等度の増加 40~80万

・慢性的な出血、鉄欠乏性貧血、術後、膵臓摘出、感染症、慢性骨髄性白血病など。

2.高度の増加 80万以上

・本態性血小板血症、慢性骨髄性白血病、真性多血症など。

2012年5月6日日曜日

血液一般検査-6.白血球分類検査-


白血球は、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球の5種類に分類することが出来ます。

白血球を染色してこれら5種類に分類する検査を白血球分類検査または、血液像と呼びます。

これら5種類の白血球は、身体が正常な状態のときはそれぞれの占める割合が一定範囲内に保たれていますが、身体になんらかの異常が発生すると比率に変化が現れます。

これら5種類の白血球の働きを簡単に説明しておきます。

1.好中球

白血球の半分以上を占め、外界から病原菌や異物が侵入すると増加して、病原菌や異物を食べて分解し生体に無害なものにします。

感染症に感染した時や炎症があるときに増加します。

2.リンパ球

免疫を司り、Tリンパ球とBリンパ球があり、病原菌が侵入した時に、その病原体に対する抗体を作って撲滅する働きをするとともに、侵入した病原体を記憶する働きを持っています。

ウイルス感染で増加します。

3.単球

マクロファージ(大食細胞)とも呼ばれ、病原菌や異物などを食べて生体に無毒なものにし、免疫抗体を作り出すことを促す働きをします。

4.好酸球

生体の防御反応に関与し、アレルギー性疾患に感染すると増加します。

寄生虫に感染すると増加します。


5.好塩基球

ヒスタミンやヘパリンなどの物質を含み、アレルギーや血管拡張などの作用に関与することから、細胞内の顆粒(ヒスタミン等)を放出し即時型アレルギーをおこします。

【基準値】

好中球 40~70%
リンパ球 20~45%
単球 3~7%
好酸球 0~5%
好塩基球 0~2%

※白血球分類は、自動血球計数機で自動的に分類されることから、使用機器の種類により基準値は若干異なることがあります。

【白血球増加の原因】

1.好中球

感染症、炎症、血液疾患及び膠原病など。

2.リンパ球

ウイルス感染症、リンパ性白血病など。

3.単球

感染症、悪性腫瘍、単球性白血病など。

4.好酸球

アレルギー疾患、寄生虫感染、慢性骨髄性白血病など。

5.好塩基球

慢性骨髄性白血病、粘液水腫など。

【白血球の減少】

1.好中球

ウイルス性肝炎、インフルエンザ、急性白血病など。

2.リンパ球

AIDS、再生不良性貧血など。

3.単球

細菌により血液中に毒素が分泌されて発症する内毒素血症など。

4.好酸球

感染症の感染初期など。

5.好塩基球

甲状腺中毒症、過敏症などの急性のアレルギー反応など。