血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2014年6月27日金曜日

もっと知ろうHIV検査-3.リアルタイムPCR検査-その3-

【リアルタイムPCR検査を受ける最適な時期とは?】

不安な行為の次の日から数えて11日以降に受けることによって、信頼できる結果が得られます。


【不安な行為から30日以降にリアルタイムPCR検査を受けても意味は無いのか?】

当然不安な行為から30日が経過した時点でリアルタイムPCR検査を受けても信頼できる結果は得られますが、この時期であれば抗原抗体検査で信頼出来る結果が得られますから、強いてリアルタイムPCR検査を受ける必要はありません。

また、不安な行為から12週経過後にリアルタイムPCR検査を受ける人がいますが、これは受けても高い検査費用の無駄になります。

なぜならこの時期であれば、抗原抗体検査や迅速抗体検査でHIV-1とHIV-2の抗体を検出可能であるからです。

不安な行為から12週経過後にリアルタイムPCR検査を受けてもHIV-1の感染の判断しかできず、再度抗原抗体検査か即日抗体検査を受け直す必要があるからです。



【リアルタイムPCR検査は、不安な行為から1ケ月以上経過して受けると信頼できる結果は得られないのか?】

巷では、リアルタイムPCR検査を不安な行為から1ケ月以上経過して受けると血液中のHIV-1の量が少なくなるので信頼出来る結果が得られないと言われますが、これは間違いです。

そもそもリアルタイムPCR検査は、HIV-1感染者に抗HIV薬を使用しての治療効果を調べる意味で血液中のHIV-1の量を調べる検査ですから、極めて微量の血液中のHIV-1を検出することが可能ですから、不安な行為から11日以降いつ受けても信頼できる結果は得られます。


【リアルタイムPCR検査が陽性となるとHIV-1の感染は間違いないのか】

リアルタイムPCR検査は、全自動で検査を行いHIV以外の遺伝子の混入がないことから、偽陽性反応はゼロに近く起こりません。

従ってリアルタイムPCR検査が陽性の場合、HIV-1に感染していることは限りなく100%に近い信頼性があります。


【リアルタイムPCR検査を不安な行為から11日以前に受けて陰性であればHIV-1の感染はないのか?】

血液中のHIV-1の量が少ないためにいくら化学的にHIV-1の遺伝子の核酸を増幅しても、検査で見つかる量に達しないと陰性となります。

したがって、不安な行為から11日以降に受けるべきです。


【リアルタイムPCR検査の確認検査は何があるのか?】

リアルタイムPCR検査は、HIV-1に感染して11日以降に検出可能ですから、この時期に確認検査のウエスタンブロット法を実施しても偽陰性となってしまいます。

従って極めて早い時期のリアルタイムPCR検査の確認試験はありません。

確認方法としては、陽性となって数日後に再度リアルタイムPCR検査を実施して陽性となればHIV-1の感染は間違いありません。

※最初に陽性となり、数日後の検査で陰性となった場合は、再度数日後にリアルタイムPCR検査を実施し以下のように解釈します※

1.1回目のリアルタイムPCR検査が陽性で、二回目が陰性となり、三回目のリアルタイムPCR検査が陽性となった場合は、HIV-1の感染していると判断します。

2.1回目のリアルタイムPCR検査が陽性で、二回目が陰性となり、三回目のリアルタイムPCR検査が陰性となった場合は1回目のリアルタイムPCR検査を偽陽性と判断し、HIV-1の感染はなかったと判断します。

※実際上記2のケースはまず存在しません※

2014年6月17日火曜日

もっと知ろうHIV検査-3.リアルタイムPCR検査-その2-

【リアルタイムPCR検査の受ける場合とは】
 
本来リアルタイムPCR検査は、HIV感染者の治療の際に血液中に存在するHIV-1の数を調べて、治療効果の判定をする検査法ですが、検査の感度がよく感染初期から血液中のHIV-1を検出可能なことから、HIV-1のスクリーニング検査に利用されてるようになったわけです。

【感染リスクのある行為から長期間経過すればすれば信頼性は低くなるのか?】

巷では感染するリスクのある行為から、3ケ月以降受けると血液中のHIV-1の量が少なくなることから偽陰性反応が起きと言われていますが、これは誤りです。

化学的に血液中のHIV-1を1億倍に増幅することから、感染リスクのある行為から11日以降何時受けても、信頼出来る結果は得られます。

【行為から11日で受けて陰性であったものが、以後陽性となった事例はあるのか?】

感染するリスクのある行為から11日で受けて、陰性で以後陽性となった事例は報告されていません。

【HIV-2は見つけられない】

血液センターで使用しているNAT検査は、日本赤十字社がメーカとタイアップしてHIV-2も見つけられる検査キットとして製造していますから、HIV-2も見つけることは可能ですが2014年6月点ではリアルタイムPCR検査でHIV-2を見つけることは出来ません。

※研究室レベルでHIV-2を検出できるPCR検査は存在しますが、2014年6月現在この検査を医療機関で受けることは出来ません※

【将来HIV-2を見つけられるようになるのか?】

メーカでは現在のリアルタイムPCR検査改良試薬のバージョン2では、HIV-2が見つけられるようになると発表していますが、いつ頃日本において発売されるかは現時点では分かっていません。

【リアルタイムPCR検査が受けられる場所】

リアルタイムPCR検査は、高価な機器と高度のテクニックを必要とすることから大学病院及び大規模総合病院以外は、自施設では実施していません。

検査専門の会社に検査依頼をしますから、全国何処の病院やクリニックでも受けることは可能です。

ただし保健所では、ほんの一部でしか検査を実施していません。

【検査結果が判明するまでの期間は】

検査専門の会社に検査を依頼しますから、結果がわかるまでには採血してから7~14日かかります。

自施設で検査を実施してい場合でも2~3日かかります。

【偽陽性反応の出現率は】

検査は全て全自動で行われることから、外界からのウイルスや細菌などの混入がなく、偽陽性反応は殆どと言ってよいくらい出現することがありません。

【偽陰性反応の出現率は】

HIV-1の核酸を化学的に増幅して検査を行うことから、検出感度は極めて高い検査法ですので、不安な行為から11日以降に受ければ感染しているにもかかわらず陰性となることはまずあり得ません。
 


2014年6月2日月曜日

もっと知ろうHIV検査-3.リアルタイムPCR検査-その1-

【リアルタイムPCR検査とは】

HIV-1の核酸の一部の見つける検査法です。

【リアルタイムPCR検査の原理とは】

HIV-1の核酸を化学的な方法で、1億倍程度に増幅して検査をすることから検出感度も非常に高く血液中の微量のHIV-1を調べることが出来ることから、HIV-1感染の判断検査として広く用いられています。

【リアルタイムPCR検査の正式名称は】

『コバス  taqMan HIV-1「オート」』と呼びます。

 健康保険の名称は『HIV-1核酸増幅定量精密検査』です。

【どのように検査をするのか】

検査キット附属の定量標準HIV RNAを含む「カオトロピックイオン溶液」で、HIV-1を溶解して、シリカ粒子であるTaqMan磁性粒子懸濁液を使用して、HIV-1 RNA及びHIV-1RNAを精製する。

試料より抽出されたHIV-1 RNA及びHIV-1 QS RNAに自動調製された増幅試薬を加える。

核酸抽出から増幅試薬の添加までの工程は、専用機器コバスAmpliPrepを、RNAの増幅及び定量は専用機器コバスTaqManを使用して行われる。

各サイクルの「Z05 DNAポリメラーゼによる相補鎖の伸長」と「DNAプローブの切断・遊離による蛍光発光」の各ステップで測定された蛍光強度がリアルタイムにモニターされ、反応液中のHIV-1 RNA及びHIV-1 QS RNAの増幅曲線が得られます。

この際、HIV-1 RNA用のTaqManプローブとHIV-1 QS RNA用のTaqManプローブでは波長の異なる蛍光色素を使用していることから、それぞれの識別は可能となります。

得られた増幅曲線から蛍光強度が一定以上となるサイクル数を求めて、カットオフ値(Ct値:Critical threshold value)とします。

HIV-1 Qs RNAのCt値と反応液中HIV-1 RNAのCt値を用いて、キット固有の内部検量線より、血液中のHIV-1 RNA濃度を計算すます。

発光強度が一定以上に達しないときは、HIV-1 RNAのCt値として計算されないために、HIV-1 RNAは算出されません。

検査法を端的に言いますと【血液中のHIV-1を特殊な薬品で、1億倍に増殖させて、HIV-1の遺伝子の一部の核酸を機械的に調べる】検査です。

【検査成績の記録】

検出範囲は、40~1.0×10の七乗コピー/mLです。

以下の三種類に分けて記載されます。

1.測定上限を超えた場合  検査結果は【>1.0×1.0×10の七乗コピー/mL  検出  陽性】

2.測定範囲内            検査結果は【○○×1.0×10の○乗コピー/mL  検出  陽性】

3.測定限界未満でウイルスが存在する時    検査結果は【<○○×1.0×10の○乗コピー/mL  検出 陽性】

4.測定限界未満でウイルスが存在しない時  検査結果は【<○○×1.0×10の○乗コピー/mL  検出せず  陰性】